うつ病の原因解明と解決策はみなさんの手近にあるものです - そして、最大の強力な解決策は目覚まし時計をかけるという簡単なものなのです。「ウェークセラピー」 (断眠セラピー)は一晩徹夜するか、極端に睡眠時間を減らすことですが、その実行によってうつ病患者の60パーセントの人が気分が良くなったとほうこくしています。このうつ病患者はどのような原因でどのような程度の患者さんでも同じです。
この治療法は、極度のうつ状態の精神病患者(多くの人が自殺を図りかねない極度のうつ)が数時間睡眠を取らせなかっただけで正常な精神状態に戻ったという観察を元に、35年ほどまえに考案されました。男性も女性も同じような成果でした。
この、無毒で自己管理の治療法は年齢にも、入院歴にも、うつ病にかかっている期間の長さや強さにも関係なくよく効きます。躁うつ病、精神分裂病、月経前失調症や単にうっとうしいという気分の解決法でもあります。睡眠不足がうつの原因だと信じているひとにさえもこの「ウェークセラピー」が効いたのです。
この「ウェークセラピー」が一番よく効いたのは、一日のうちの感情の変化がいちじるしい患者たちです。朝、目覚めに機嫌が悪く、夕方にかけて徐々に機嫌がよくなるというパターンの患者は断眠法がよく効きます - 前の夜の睡眠時の「うつの効果」が、起きてる時間が長くなるにつれ効果を弱めるといったケースの患者です。
睡眠はうつの状態をひきおこすもので、睡眠は「ディプレッソジェニック」(うつ状態発症因子)であると心理学の学術誌にとりあげられています。覚醒状態は「反ディプレッソジェニック」です。この原因はセロトーニンにあるとされています。セロトーニンは目が覚めている状態で最大、睡眠時に最小限の働きをあらわします。(SSRI剤の効果と同じです。)
断眠は診断ツールとしても使えます。老齢の患者の場合、よく、うつ病と痴呆症がいっしょにされたりします。老齢者の場合、うつ病のせいで反応が遅いと、それが、痴呆症の始まりだと勘違いされたりするからです。老齢者は外の世界に対する興味が減少することで、睡眠時間が長くなってしまうケースが多いのです。
よくあるケースは次のとおりです。長年の就職期間に活発に仕事をしていた人が、急に引退してしまうと、眠る以外にあまりすることがなくなり、頻繁に眠るようになったりします。すると、夜の睡眠時間や昼寝が溜まり、うつ状態がひきおこされます。そして、医者に行き、睡眠薬を処方してもらい、余計に眠る時間を増やします。そうすることで、逆にうつの原因を拡大することになるのです。結論としては、意気消沈した老齢者は「ウェークセラピー」で元気を取り戻せるということです。「昔のスケジュール」に戻してやることが「昔の自分」を取り戻すことなのです。
睡眠時間のコントロールで気分を持ち上げるという方法はなにもうつ病患者に限ったことではありません - 睡眠時間を減らすことが、「正常書」の気分向上に役立つという研究結果が報告されています。
これらを考慮に入れると睡眠時間を操作することでほとんどの患者が抗うつ剤から逃れ、感情的にも満足できる生活が出来ることがわかります - 自分で自分の感情をコントロールする能力をあたえるからです。
断眠による重大な副作用は感情の起伏が激しくなり躁状態をひきおこす可能性があることです。みなさんも(試験の前とか仕事の忙しいときとか)何日も寝不足で過ごしたときのことを思い起こせば、自分が軽薄になったり、マニックになったことを思い出すかもしれません。ですから、睡眠妨害をなくしたり、睡眠時間を増やすことが躁状態の人には役にたつでしょう。
「ウェークセラピー」の副作用には、眠くなったり、けだるくなったりするということもあります。ですから、車の運転や危険な機械の取り扱いには十分注意しなければなりません。
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