猫が食肉動物であるなら、人間は「でんぷん食動物」であると考えるのが正しいでしょう。ほんの少数のお金持ちの貴族を除いては、つい最近まで、殆どの人間が大部分のカロリーをでんぷんから摂取して生きてきました。
これが変わったのは1800年代の工業改革で富の増加が図られ、化石燃料が使われるようになってからです。それから、何百万人もの、そして、何億人もの人達が、その以前なら王族しか出来なかったような、肉や鶏肉や乳製品が山と積まれたテーブルにつくようになったのです。
みなさんの周りを振り返ってみてください。その結果は明確です。まるで昔の絵画に見られる王やお妃のように丸々と太っている人々が増え続けています。よく考えると、でんぷん食による食生活改善、スターチ・ソリューションがいかに大切かおわかりになるでしょう。
でんぷんは砂糖の分子が長くつながった「複合炭水化物」で、植物の中にたくわえられている物質です。
植物は成長期に、緑の葉が太陽からエネルギーを集め、糖分を作り、小さなでんぷんの粒子を作ります。植物はこれを冬を越すために使い、翌年、繁殖に使います。人間が食べる植物のでんぷん質の部分は、単に「でんぷん」とよばれています。根菜(じゃがいも、サツマイモ、カサバいも)や穀物(大麦、トウキビ、米、麦)は植物にとってはスターチの倉庫です。
ブロッコリやカリフラワーやアスパラガスのような緑黄色野菜は比較的に、でんぷんの少ない植物です。果物は複合炭水化物ではなく、単純分子である糖を蓄えます。牛肉、鶏肉、魚貝類、卵、牛乳、チーズといったような動物性食物にはでんぷんは含まれて居ません。
でんぷんは、マラソンの王者が必要とするような大量のカロリーを簡単に補給できる一方で、体重増加の原因にはなりません。それは、人間の体というものは、たとえでんぷんをとりすぎた場合でも、でんぷんから摂取した炭水化物の粒子を効率よく燃焼し、体内に蓄積しないからです。
では、体の調整というのはどのように効率のよいものなのでしょうか。アジアでは、運動量が様々な何億人もの人たちをみても、伝統的な食生活を営んでいる人達の間では肥満の問題はみられません。
しかし、この肥満に対する抵抗力のようなものは食事を肉や乳製品にたよることによって失われてしまいます。これは、人間の体というものは摂取された余分な脂肪を解消することが出来ないからです。この余分なカロリーは腹部や臀部や腿に蓄積されます。つまり、食べる脂肪は着る脂肪なのです。
でんぷんは低脂肪(摂取カロリーの1% to 8% )で、コレストロールを含んでいません。そして、サルモネラや大腸菌や狂牛病病原体などの病原体を繁殖させません。また、DDTやメチル水銀のような有毒薬を蓄積しません。時には牛の糞や農薬などの汚染が表面に起きることもありますが、これは食物の責任ではありません。でんぷんはきれいな燃料なのです。
でんぷんに含まれる炭水化物は舌の先にある味覚芽を刺激します。ここから、食の楽しみと満足がはじまるのです。すばらしい味と体に役に立つカロリーといった自然の価値があることから、人々は豆やパンやとうもろこしやパスタや芋や米を、幸福感を与える食べ物、「コンフォート・フード」と読んだりするぐらいです。
でんぷんは、きれいで、効率が高く、幸福感をあたえるエネルギー源であるほかに、たんぱく質や必須脂肪酸やビタミンやミネラルの豊富な補給源でもあります。ジャガイモやサツマイモに含まれるでんぷんなどは栄養の面だけ考えてみても「完全食」であると言えます。
穀類は豆類はビタミンAとCが欠如しています。これは少量の果物や緑黄色野菜を摂取することによって簡単に補えますから、穀類は豆類にたよる食事というものは完璧な食餌法であるということになります。
原文
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参考
人間だけが持っている澱粉分解酵素 沼田 勇